〜体重の悩みは「病気」として治療できる時代へ〜

肥満は見た目の問題だけではなく、高血圧・糖尿病・脂質異常症・睡眠時無呼吸など、さまざまな病気のリスクを高める「慢性疾患」として、医学的に位置づけられています。「食事や運動を頑張っても効果が出ない」「健康診断の数値が気になる」といった方も、一緒に無理のない方法で取り組んでいきましょう。一人ひとりの体質や背景に合わせた個別の治療プランをご提案いたします。

保険診療で行う場合

厚生労働省の保険適応基準

そのうえで、大学病院などの特定の研修施設でのみ処方が可能

このような基準をすべて満たし、かつ保険で治療を受けられる病院に通院できる方はごく一部に限られます。
実際には「BMI27〜34」の方や、合併症が1つだけの方、生活習慣改善をしていても短期間しか通っていない方は、保険適用外となってしまいます。

だからこそ、自費診療の選択肢があります。
ゼップバウンドは元々アメリカで承認された薬剤ですが、 アメリカでは薬を使った治療の導入基準は、日本に比べてはるかに緩やかであり、現実的かつ柔軟に使用されています。

【アメリカにおける投薬基準((FDA基準、2023年))】

以下のいずれかを満たす成人が対象です。

  1. BMI ≥ 30 kg/m²(肥満)
    単独で適応あり(合併症の有無にかかわらず)
  2. BMI ≥ 27 kg/m²(過体重) + 肥満関連疾患を少なくとも1つ有する
    例:2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)など

当院の自費診療

当院では、保険適用には届かないが治療が必要とされる方に向けて、自費診療による肥満治療を提供しています。
単なる美容目的では処方しません。肥満症に対する適応という点は堅持し、合併症の改善につなげる目的で処方します。
薬は一生使うわけではなく、一定の期間で終了します(例:ゼップバウンドは72週、ウゴービは68週)。そのため、それ以降は自身での食事運動管理が必須になります。当院では薬剤を用いた治療と栄養指導を同時に行うように定めました。

当院の適応基準

  1. BMI ≥ 30 kg/m²(肥満)
    単独で適応あり(合併症の有無にかかわらず)
  2. BMI ≥ 27 kg/m²(過体重) + 肥満関連疾患を少なくとも1つ有する
    例:2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)など
  3. 栄養指導と薬剤での治療を同時並行することに同意していただける方

(合併症があるのか不明な方や他院で治療中の方は受診時に相談してください。そのための検査は保険適応となる可能性があります。)

受診・治療の流れ

保険診療での投薬治療を希望されている方で、その適応のある方は保険で対応可能な医療機関へ紹介します。

自費を希望される場合

当院の自費診療を希望される方は、栄養指導同時に投薬が開始されます。

効果・副作用・注意点

ウゴービ(セマグルチド)

平均体重減少率

約14.9%(68週間の使用時)

臨床試験

STEP1試験(対象:肥満または過体重の成人、糖尿病なし)

試験結果

週1回の2.4mg皮下注射により、プラセボ群と比較して有意な体重減少が確認されました。

ゼップバウンド(チルゼパチド)

平均体重減少率

最大20.9%(72週間の使用時、15mg投与)

臨床試験

SURMOUNT-1試験(対象:肥満または過体重の成人、糖尿病なし)

試験結果

週1回の投与により、プラセボ群と比較して有意な体重減少が確認されました。

主な副作用

吐き気・便秘・下痢・倦怠感・食欲低下

稀な副作用

膵炎、胆嚢疾患、低血糖(糖尿病治療薬と併用時)など

※妊娠中・授乳中の方、消化器疾患のある方は使用できません。

費用

内容 金額(税込)
初回受診+採血(1回) ¥9,500
月1回の再診料 ¥2,500
オンライン栄養指導料(月1回、30分以上) 未定(¥4,000前後)
定期採血(1回) 開始前、開始後1ヶ月、その後4ヶ月に一度 ¥5,500
薬代 金額(税込)
2.5mg×4本/月+薬局受付料金/月1 容量や薬局によっても異なるため
受診時にご相談ください。
5.0mg×4本/月+薬局受付料金/月1
7.0mg×4本/月+薬局受付料金/月1
※7.5mg以降は順次値段を確定していきます

よくあるご質問(FAQ)

Q. どんな薬ですか?

A. 現在肥満症に適応のある薬剤は、週1回の自己注射です。GIP/GLP-1受容体作動薬というタイプに属し、食欲を抑え、脂肪の燃焼を助ける働きがあります。従来の肥満治療薬よりも強力な効果が期待されています。

Q. 本当に痩せられるのでしょうか?

A. 臨床試験では、平均15〜22%の体重減少が確認されています。
たとえば体重80kgの方であれば、12〜17kgの減量が期待できます。ただし、食事・運動と併用して続けることが前提です。

Q. 副作用はありますか?

A. 主な副作用は以下の通りです。
吐き気・便秘・下痢・だるさ・食欲低下
稀に膵炎、胆石、胃腸障害など
当院では、安全に使用できるかを確認するため、事前に採血や心電図などの検査を行います。

Q. 薬はどのように使うのですか?

A. 週に1回、皮下注射します。ご自宅で打つことが基本ですが、最初は院内で練習もできます。
容量は徐々に増やしていき、副作用に慣れながら体重減少を目指します。

Q. 自費診療だと値段が高くて大変です

A. たしかに肥満症治療を自費で行う場合、月に2〜3万円前後のご負担が生じてしまいます。
ただ、「最終的に保険診療を前提としたい」「単なる審美目的の減量希望ではなく、医学的な評価・管理を目的として高血圧や糖尿病などの合併症があるかを調べたい」といったご希望があれば、初回の診察や採血などの検査は保険診療で行うことも可能です。
薬の使用に進むかどうかは、検査結果やご希望に応じて一緒に相談して決めていきます。

Q. いつまで続ける必要がありますか?

A. 薬の種類によって異なりますが、68~72週の継続が推奨されています。
急な中止でリバウンドするリスクもあるため、医師の指導のもと徐々に減量しながら減薬を検討していきます。

Q. 他の病気があっても使えますか?

A. 多くの方で使用可能ですが、以下の方は使用できないか、慎重な判断が必要です。
妊娠中・授乳中の方、重度の胃腸障害、膵炎既往のある方、糖尿病の方(保険適応で同様の薬剤で別称のマンジャロが使用できるため)

Q. 相談だけでも大丈夫ですか?

A. もちろん可能です。また保険での適応も検討したいという場合は、初回の診察や検査は保険適応です。
「体重のことでずっと悩んでいる」「でも薬に抵抗がある」など、不安なこともお気軽にご相談ください。
無理な勧誘や強制は一切ありません。安心してご来院ください。

Q. 投薬治療を行うのに、どうして同時に栄養指導が必要なの?

A. 薬剤が使用できる期間には限りがあります。そのため、薬の使用を終えたあともリバウンドせずに体重を維持するには、「自分自身で食事を整える力」がとても大切になります。痩せるためではなく、「痩せたあとをどう保つか」が本当の勝負なのです。